海洋生物学者レイチェル・カーソンの代表作。
誰よりも自然を愛し、産業化の波が加速していた時代に、いち早く環境保護を唱えた女性エコロジストの第一人者である。
表紙カバーには、印象的な黄色い花の写真が採用されています(2001年版は「ゴゼンタチバナ」)。
手にした時ふと思ったが、この花の名前が一向にわからない。カタバミ??かなと思いながら調べてみると、「キバナノコマノツメ(黄花の駒の爪)」というスミレ科の花に辿り着いた。葉の形が馬の蹄に似ていることからその名が付けられており、現在でも絶滅が危惧されている花のようだ。
ちなみに、本書の少し前に書かれた、
『センス・オブ・ワンダー(2002年版)』の表紙カバーは「イチヤクソウ」です。
本書のテーマは『環境保護』である。
この本の冒頭は、誰もが息をひそめるような恐ろしい描写から始まります———『自然は、沈黙した。鳥たちは、どこへ行ってしまったのか。』
鳥は「自然の番人」なのである。そこから、化学薬品(DDT)の乱用が自然界にもたらす甚大な影響について、当時の科学的根拠を基に、繰り返し繰り返し冷静に事実を積み重ねていきます。
60年前に書かれていますから、現在ではDDT使用における自然環境への良し悪しについては解釈を異にするケースもあるかと思いますが、女史は一貫して、生物学的コントロールの大切さと、次世代へ美しい自然を残すために、「深い洞察力」を持って欲しいと主張しています。
ベストセラーとして、世界中に環境保護の先鞭をつけた名著です。世界を変えた一冊ともいえます。
環境や多様性という概念がまだ定着していない時代に、複雑であるがゆえに自然界の均衡(バランス)を維持することの難しさや、世界中に化学薬品によって苦しむ人々やたくさんの動物たちがいるという事実について、目を背けることなく書き綴っています。
また、本書のいたる所に愛語が散りばめられており、女史の自然への愛や畏敬の念が垣間見れるはずです。翻訳した青樹簗一さんも見事である。
是非一度手にとって頂きたいと思います。
ふくろう